社交ダンスと風俗営業法

社交ダンスに関して時々取り沙汰される法律が風俗営業法です。

わたしは、風俗営業法に興味はなかったのですが、DDD勝手にダンス事典の姉妹サイトの「社交ダンス・ダンスダンスダンス」で、社交ダンスと風俗営業法との関係について議論があったので、好奇心をかき立てられ、これを機会に、一度調べてみようと思いました。例によって、又聞きや思い込みを排除するために、風俗営業法、政省令、通達などを探して引用しました。

なおtamaは、薬事法(医療機器のみ)や環境関連法については知識と経験は持ち合わせていますが、風俗営業取締法については素人ですので、法律の解釈に万が一間違いがあっても責任は持ちません^^

引用した法律等


ダンスと風俗営業法との関係に関する他の解釈




Q1

 日本で社交ダンスに関係した法律にはなにがありますか?

A1

以下の2つが関係します。著作権法については別の機会に調べてみようと思います。

 風俗営業取締法
 著作権法


Q2

風俗営業とはどんなものを指すのですか?

A2

風俗営業とは、風俗営業法、正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の(用語の意義)第二条で定められています。
この第二条は全部で八項あり、各号で風俗営業とは何を指すかが定められています。いずれの号でも「...他設備を設けて...」と定められていますので、設備を持たない営業は風俗営業法の適用はされません。

(用語の意義)第二条はここをクリック



Q3

ダンスに関連して風俗営業法の適用を受ける営業にはどんなものがあるのですか?

A3

風俗営業法の適用を受ける営業には以下の3つがあります。

   キャバレー
   ダンス飲食店
   ダンスホール等

それぞれの定義は、以下のように(用語の意義)第二条で定められています。

営業の種類 適用条項 定義
キャバレー (用語の意義)第二条一号 キヤバレーその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる営業
ダンス飲食店 (用語の意義)第二条三号 ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(第一号に該当する営業を除く。)
ダンスホール等 (用語の意義)第二条四号 ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業(第一号若しくは前号に該当する営業又は客にダンスを教授するための営業のうちダンスを教授する者(政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。)が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業を除く。)


tamaの解釈

ホテルがダンスの催し物のために設備を貸す場合は、上記の「ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業」に相当します。

なお、上記のいずれも、「営業のための設備を設ける」ということが条件になっていますので、ホテルの会場や、公民館で、不定期に場所を借りてダンスパーティを催す場合は、ダンスパーティの主催者は、風俗営業法の適用を受けないと思われます。ただし、自前で設備を設けなくても、賃貸契約でダンスフロアを借りて営業をする場合は、おそらく「営業のための設備を設ける」ことに相当すると思われます。



Q4

第二条の四号のカッコの中の除外規定がよくわかりません。
もう少し詳しく説明してください。

A4

この除外規定は、客がダンスを学ぶためにダンス教習所に通ってダンス教師に教えを乞うのは風俗営業ではないという考え方を盛り込むために、法改正されたものです。
回りくどい言い方をしていますが、単純に言うと、ダンス教師が客に教える場合だけは風俗営業とは扱わないけれど、それ以外客が踊る場合は風俗営業法と扱うよというわけです。

tamaの解釈

ですから、客が一人で踊ること、ないしカップルで踊ることを認めた営業形態をとっているならば、そこのダンスホールでの営業は風俗営業だということになります。



Q5

ダンス教師とは、この第二条四号でいう、ダンスを教授する者のことだと思いますが、どんな資格が必要なのでしょうか?

A5

法律の二条の四号では、以下のように書いています。つまり「法律の下にぶら下がっている政令に詳しいことを決めていますよ」ということです。

ダンスを教授する者(政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。)

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令」(以下施行令)がその政令で、以下のように定められています。
つまり以下の2つの条件のどちらかを満足することが教授する者の資格ということになります。

法で定める
ダンスを教授する者の資格
施行令で定める適用条項 資格条件
政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者 施行令第一条 社団法人全日本ダンス協会連合会(全ダ連)又は財団法人日本ボールルームダンス連盟(JBDF)が行う講習であって、国家公安委員会が指定したもの
その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者 施行令第二条 全ダ連又はJBDFが前条に規定する講習の課程を修了した者と同等の能力を有する者として国家公安委員会規則で定めるところにより国家公安委員会に推薦した者

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令第二条全文はここをクリック




Q6

風俗営業法の適用を受ける場合でも、ダンスを教える場合は必ずこの資格を持っていなければならないということでしょうか。

A6

違います。この資格は、あくまで、ダンスホールその他設備を設け客にダンスを教授するという営業を行って、なおかつ風俗営業法の規制を受けないための条件です。したがって、ダンスホールその他設備を設け客にダンスを教授するという営業を行う場合であったとしても、風俗営業法の規制を順守するのであれば、この資格は不要です。

tamaの解釈

ですから、ダンスパブなどでは風俗営業の認可をうけているでしょうから、マスターがお客に教える場合でも、この資格は不要でしょう。

あるいは東京のダンスホール新世紀東宝ダンスホールなどでは、客同士がダンスをするので、風俗営業法の認可をうけて営業されているはずですが、そこでダンスを教えていらっしゃるダンス教師の方にはこの資格は必須ではありません。

また、自分でダンスホールその他設備を設けずに、ダンス練習場や、ダンスパーティで、営業としてダンスを教えたとしても、風俗営業法に違反しているわけではありません。ただし、社会人のマナーとしては、ダンスパーティの会場で、教えるために他の人達の迷惑になるような行為をすることは慎むべきですが。



Q7

風俗営業法の適用を受けないダンス教習所でダンスを教える場合は、必ずこの資格を持っていなければならないということでしょうね?

A7

必ずしもそうではありません。資料4の第2項では以下のように書かれています。
したがって、資格を持ったダンス教師が客に教えるのを補助する場合は、アシスタントは資格をもっていなくても差し支えありません。

第2 客にダンスをさせる営業について(法第2条第1項第4号関係)
「ダンスを教授する者が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業」とは、常態としてダンスを教授する者の指導及び管理の下に客にダンスをさせる営業を意味し、客がダンスをしている場において、ダンスを教授する者が現に存在し、客に個別に指導することが可能な状態にある必要がある。したがって、例えば、ダンス教師がビデオ等により、又はテレビ等を介して客にダンスを指導する場合はこれに当たらない。
なお、令第1条及び第1条の2で定める要件を満たしていないダンス教師が当該要件を満たしているダンス教師によるダンスの教授を補助することは差し支えない。



Q8

資格を持ったダンス教師が一人で、アシスタントを使って、複数のダンス教習所で同時に客にダンスを教授することは差し支えありませんか?

A8

資料4では以下のように書かれています。つまり資格を持ったダンス教師が、教えているところに存在している必要があります。
上記の場合、そのダンス教師が同時に複数教習所で教授することはできませんので、風俗営業法の許可を取得する必要があります。

第2 客にダンスをさせる営業について(法第2条第1項第4号関係)
「ダンスを教授する者が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業」とは、常態としてダンスを教授する者の指導及び管理の下に客にダンスをさせる営業を意味し、客がダンスをしている場において、ダンスを教授する者が現に存在し、客に個別に指導することが可能な状態にある必要がある。したがって、例えば、ダンス教師がビデオ等により、又はテレビ等を介して客にダンスを指導する場合はこれに当たらない。
なお、令第1条及び第1条の2で定める要件を満たしていないダンス教師が当該要件を満たしているダンス教師によるダンスの教授を補助することは差し支えない。



Q9

JBDFやJDSFでは指導員制度というものがあって、アマチュアでもなれると聞いていますが、それらの指導員制度の資格要件と、風俗営業法で定める、ダンスを教授する者の資格要件はどういう関係があるのですか。

A9

指導員はあくまで、それぞれの団体がそれぞれの制度に基づいて与える資格ですが、風俗営業法で定めるダンスを教授する者の資格要件とは無関係です。

指導員は、それぞれの団体の制度規定にしたがって行動をしなければなりませんし、指導した場合の報酬なども規定に従がって受け取ることが要求されます。規定に違反した場合は、その指導員の資格を剥奪されるということになりますが、その場合でも風俗営業法に違反したというわけではありません。




  • 最終更新:2012-07-03 23:59:21

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