回転量とは

ISTDのテクニックブック(いわゆるボルテク)、IDTA、WDSFのテクニックブックでは、タンゴを除いては、どのテクニックブックのどのフィガーにも一応各ステップごとの「回転量」の欄にはどの程度回転するのかという記載があります。

しかし「回転」の始まりがどの時点のどの足の向きなのか、また「回転」の終りはどの時点のどの足の向きなのかなど、曖昧な点がありますが、テクニックブックを含め、調査した範囲ではかならずしも明確な答えは見つけることができませんでした。

そこで、ボルテクの「回転量」の記載内容と、ボルテクのフィガーの足型を忠実に再現したDAN-NAVI(ユーフォー・プロダクション出版)の足の向きを比較し、「回転量」をどのように解釈すべきか、ほぼ理解できました。その結果をQ&A形式で説明するとともに、その解釈について記載しました。

なお、DAN-NAVIとは、ボルテクの著者のアレックス・ムーアのダンススタジオの教師で、実質的な執筆者と言われているエリザベス・ロメイン女史が監修したもので、大変信頼性が高い足型図です。(購入はこちらから→http://www.danceview-ichiba.com/SHOP/203101.html

以下にその一例を示します。サムネイルをクリックすると拡大画像を見ることができます。

DAN-NAVI 6.JPG

Q&A

  • 回転量とは、ボディの回転の大きさですか?

    いいえ、主にサポーティングフットによって行われるステップの前後の両足の向きの変化量です。足の向きの変化量とボディの回転の大きさとは密接な関係はありますが、チャートの回転量の欄に書かれているのは、足の回転の大きさです。なお同じ回転欄に、「体を少し右へ回転」とか、「5で体を左へ回転」などと書かれている場合がありますが、この場合は足の回転はありません。

  • よくわかりません。もう少し説明してください。


  • なぜ、45度とか90度とか使わずにダンスでは1/8とか1/4などという単位を使うのでしょうか?

    この理由は単純で、ダンスに限らず米英では分数による角度の表記が一般的だからです。

  • フォックストロットのチェンジ・オブ・ダイレクションのように足の向きが変わるだけの場合でもなぜ「回転」と呼ばれるのでしょうか?

    この理由は「回転」とか「回転量」という訳語は、原文の英語ではTurnとかQuantity of Turnですが、このTurnは「回転する」だけでなく、「角を曲がる」、「折り返す」、「ひっくり返す」などのように、基本概念としては「向きを変える」という意味を持ちます。ただぴったり一致する日本語がないため、回転という言葉を当てはめただけです。

  • しばしばあるステップ、たとえばステップ1で「左回転を始める」と記載されていることがあります。この場合の回転量はどう考えたらいいのでしょうか?

    この例の場合、続くステップ2で必ず「1-2の間で3/8」といった記載がされており、ステップ1の回転量はステップ2の回転量に含まれます。いいかえれば、ステップ2での回転を前倒ししてステップ1で始めると考えて構いません。

  • たとえは、ワルツのナチュラルターン男子のように、ステップ1で「右回転を始める」、ステップ2で「1-2の間で1/4」、ステップ3で「2-3の間で1/8」といった書き方がされている場合がしばしばあります。この場合「1-2の間で」とか「2-3の間で」というのはどう解釈したらいいのでしょうか?

    これを理解するためには、それぞれの回転はサポーティングフット上でなされるということを理解する必要があります。この例の場合では以下のようになります。

ステップ 足の位置 回転量 意味)
右足前進    右回転を始める ステップ1前半で右足が右へ向き始める
左足横へ 1-2の間で1/4 ステップ1の後半からステップ2の前半まで右足ボールで1/4右回転
右足 左足へクローズ 2-3の間で1/8 ステップ2の後半からステップ3の前半まで左足ボールで1/8右回転


詳細な説明

回転と訳されている原文のTurnという言葉は向きを変えるという意味であり、「回転」という訳語は不正確であるがここでは回転と呼ぶ。&br;&br;

  • 「回転」は、フロア上でカーブしながら移動していく際の足の向きの変化、サポーティングフットのフットスイブル(ボールおよびトーを中心軸とした回転)、ヒールターン(ヒールを中心軸とした回転)、ムービングフットの内旋、外旋、などのアクションによって作り出されるが、チャートの中の回転量は、それらのアクションによる回転量をサポーティングフットごとに加算して定められている。

  • チャートに記載されている回転量は、あるステップにおいて、どちらか一方の足(Aとする)がムービングフットからサポーティングフットになった時点の足(A)の向きを基準とし、その時点でのムービングフットである反対側の足(Bとする)が次にサポーティングフットになった時点の足(B)の足の向きとの差で測られている。

    「どちらかの足がムービングフットからサポーティングフットになった時点」というのは、言い換えれば、両足が開き、中間バランスになった時点である。

  • 最初のスタートなど、両足が揃ったところから始める場合は、(1)の定義の、「一方の足(A)がムービングフットからサポーティングフットになった時点のその足の向きを基準とし」を、「サポーティングフット(A)の足の向きを基準とし」と読み替えることができる。

  • ムービングフット(B)を、体重をかけずにサポーティングフット(A)に引き寄せてクローズするステップの場合は、足(A)がムービングフットからサポーティングフットになった時点の足(A)の向きを基準とし、クローズした時点でのサポーティングフットつまり足(A)の足の向きとの差で測られている。
    この理由は、ムービングフット(B)を、体重をかけずにサポーティングフット(A)に引き寄せるステップの場合は、両足がそろった時点では(A)を再びサポーティングフットにする必要があるためである。

    (例:ダブルリバーススピン)

  • たとえば、「ステップ1と2の間で1/4右回転」などという指示があるが、この意味は、ステップ1の途中の中間バランスになった時点から、ステップ2の途中で中間バランスになった時点までの間で、1/4右回転せよということである。

    (注)
    中間バランスになった時点というのは、ボルテクにもIATDのテクニックブックには明示されていないが、WDSFのテクニックブックでは、中間バランスの前後で一つのステップのFoot Placementの欄を2つに分割している。

  • 「ステップ1で回転を始め、ステップ2で1/4回転する」と指定されたフィガーがあり、両方の回転が同じサポーティングフットでかつ同一方向に行われる場合は、この指示は「ステップ2で指定された回転をステップ1の途中から早めに行うが、回転量としてはステップ1と2の合計で1/4回転する」ということである。これはWDSFのテクニックブックの説明とも合致する。

  • ムービングフットがフロアを移動する途中に、ムービングフットの足の向きが変わった場合は、その回転量も、そのムービングフットがサポーティングフットに変わったあとのサポーティングフットの回転量に加算されている。

    (例:カーブド・フェザー)

  • 2つ以上のサポーティングフットにわたって継続して回転が行われる場合も、回転量はそれぞれのサポーティングフットごとに分けて記載されている。

    (例:コンティニュアス・スピン)


その他注意事項

  • 回転量は「両足の間、又は一つの足で測る回転の量のこと」(ボルテク第11版)と定義されており、ボディの回転と密接な関係はあるが、決してボディの向きの回転量ではない。

    回転量がボディの向きの回転量と一致しない場合は回転量に関するチャートの中に「ボディの回転は少なく」と注書きがされている。

    ただしボディのひねり(WDSFで言うローテーション)が含まれないよう、ボディの回転量というより、正確にはヒップすなわち骨盤の回転量と考えるべきである。

  • 最終更新:2017-10-14 14:48:26

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